「心に温もりを感じられる映画に出会うと、日常が少しだけ優しく感じられます。」
私にとって、その体験をくれたのが『青春18×2 君へと続く道』でした。観に行こうと思った日は劇場が満席で叶わず、一週間後にようやく鑑賞。その分、スクリーンに映し出される物語の温かさが胸に響き、心の中にじんわりとした余韻を残してくれました。そんな心温まる作品について、これから少しずつお話ししていこうと思います。
作品情報
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あらすじ
18年前、台湾の高校生ジミー(シュー・グァンハン)は、日本からのバックパッカー・アミ(清原果耶)と出会い、ひと夏を共に過ごします。しかし、アミの帰国により二人は別れ、ジミーは彼女との再会を夢見ていました。現在、36歳となったジミーは、人生の岐路に立たされ、アミとの約束を果たすべく日本へと旅立ちます。東京から福島までの道中、彼はアミとの思い出を辿りながら、自身の成長と再生を遂げていきます。
キャスト・スタッフ
キャスト
- ジミー役:シュー・グァンハン
- アミ役:清原果耶
- リュウ役:ジョセフ・チャン
- 幸次役:道枝駿佑
- 由紀子役:黒木華
- 中里役:松重豊
- 裕子役:黒木瞳
錚々たる顔ぶれですよね…。
主演のシュー・グァンハンさん(1990年生まれ)と清原果耶さん(2002年生まれ)は12歳の年齢差があります。しかし、映画ではその差が全く気にならないほど、二人の演技が自然で見事に調和しています。特にシュー・グァンハンさんは18歳と36歳という異なる年代の役を演じており、その演技力と再現度の高さに圧倒されました。
スタッフ
- 監督・脚本:藤井道人
- プロデユーサー:チャン・チェン
- 撮影:今村圭佑
- 音楽:大間々昴
- 主題歌:Mr.Children「記憶の旅人」(TOY’S FACTORY)
- 配給:ハピネットファントム・スタジオ
今作の脚本・監督を手がけた藤井道人さんは、『新聞記者』(2019年)、『ヤクザと家族 The Family』(2021年)、『余命10年』(2022年)など、数々の話題作を生み出してきた注目の映画監督です。その確かな演出力と物語性は、今作でも存分に発揮されています。
撮影を担当した今村圭佑さんは、映画やCM、MVなど多方面で活躍する映像監督です。そして今作では、台湾の街並みが美しく切り取られ、どこか幻想的な雰囲気を醸し出す映像がとても印象的でした。この映像美が作品の大きな魅力のひとつになっています。私も観ている間ずっと物語に引き込まれるような気持ちになりました。
公開情報
- 公開日:2024年5月3日
- 配信:Netflixにて独占配信中(2024.12.28現在)

映画『青春18×2 君へと続く道』の見どころと魅力
心奪われる映像美
本作の大きな魅力のひとつは、台湾の街並みや自然を美しく映し出した映像美です。全編を通じてどこか幻想的な雰囲気が漂い、まるでその場にいるかのような臨場感を味わえます。特に印象的だったのは、ランタンを夜空に飛ばす「天燈上げ」のシーンです。思わずため息が出るほどの美しさで、物語に深い余韻を与えています。
このシーンに描かれた「天燈上げ」は、台湾で毎年旧正月に行われる「天渓天燈祭り(天燈節)」を基にしています。ランタンに願い事を書き込み、夜空に飛ばすと願いが叶うと言われるこの行事は、地元の人々だけでなく観光客にも人気のスポットです。本作では、この伝統行事を通じて台湾の文化や魅力が美しく描かれています。
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キャストの演技に引き込まれる
ジミーを演じたシュー・グァンハンさんは、18歳から36歳までという幅広い年代を見事に演じ分けています。18歳の頃のあどけない表情や振る舞いと、36歳の成熟した落ち着きのある姿の対比が印象的で、役の内面が丁寧に表現されています。
一方、アミを演じた清原果耶さんの繊細で自然な演技も見どころです。彼女が見せるさまざまな表情がアミというキャラクターに深みを与えています。二人の息の合った演技が、この映画の魅力をさらに引き立てています。
感情が揺さぶられるストーリー
この作品の大きな魅力は、登場人物の心情が丁寧に描かれ、観る者の心に深く訴えかけるところです。言葉だけでなく、表情や視線、仕草などからも繊細な感情を読み取ることができます。
中でも、アミが帰国するために皆と別れた後、帰りの電車でひとりアルバムを見ながら涙を流すシーンには胸が締め付けられました。最後まで本心を胸に秘め、気丈に振る舞っていたアミだからこそ、その瞬間の感情の爆発が一層辛く感じました。あのとき、アミはどんな想いを抱えていたのだろうかと思うと、涙が止まりませんでした。
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日本のカルチャーが彩る日台合作
今作は日台合作映画ということもあり、作中には日本のカルチャーが随所に描かれています。漫画『スラムダンク』や映画『Love Letter』といった作品の影響が見られるシーンや、二人が電車の中でイヤフォンを片耳ずつ分け合って聴くシーンでは、Mr.Childrenの楽曲が使用されていたりと、日本文化が台湾でも親しまれている様子が伝わってきます。こうした要素は、日本人として誇らしく感じるだけでなく、より映画に感情移入しやすくなる魅力のひとつになっていると思います。
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さいごに
偶然と運命が重なり合うストーリーは、観る者の心にそっと寄り添います。青春の瑞々しさや大人になる過程での葛藤が丁寧に描かれ、まるで自分の人生を振り返る旅のようでした。観終わった後には、温かい余韻が心に残り、何度でも観たくなる作品です。
人生は、これまで歩んできた道を確かめる旅でもあり、これからの未来を目指す旅でもあります。大切なのは、自分が見たい景色を求めて歩み続けることだと思いました。
これからも、ずっと旅が続きますように――