どんな話?映画『PERFECT DAYS』感想と考察――静けさに満ちた人生の輝き

シネマノート

公開前から話題を集めていた映画『PERFECT DAYS』。鑑賞した方々からの評判も高く、私もずっと気になっていました。そんな中、Amazonプライム・ビデオで配信が始まったと知り、早速鑑賞しました。静かで温かい雰囲気の作品で、心に残る魅力が詰まっています。
今回は、話題作でもある映画『PERFECT DAYS』の魅力についてご紹介していきます。

作品情報

あらすじ

東京・渋谷で公共トイレの清掃員として働く平山(役所広司)の静かな日常を描いています。彼は毎日同じ仕事を繰り返し、少しずつ周囲との関係を築いていきます。平山は日々の中で、身の回りの小さな幸せを感じながら生活しています。ある日、彼のもとに家族や過去の人々が登場し、平山の世界に変化が訪れることになります。この映画は、日常の中で感じる些細な喜びや、他者との交流の大切さを描いています。

 

キャスト・スタッフ

キャスト

  • 平山役:役所広司
  • ニコ役:中野有紗
  • タカシ役:柄本時生
  • アヤ役:アオイヤマダ
  • ケイコ役:麻生祐未
  • ママ役:石川さゆり
  • 友山役:三浦友和
  • ホームレス:田中泯

映画『PERFECT DAYS』には、主なキャストに加えて、豪華な俳優陣が多数出演しています。作中では、よく他の作品でも目にする俳優たちが、さりげない役で登場し、物語の各所でその存在感を放っています。その姿も見どころの一つです。彼らの演技が物語に深みを与え、さらに魅力的な作品に仕上がっています。

 

スタッフ

  • 監督:ヴィム・ヴェンダース
  • 脚本:ヴィム・ヴェンダース / 高崎卓馬
  • 製作:柳井康治
  • 製作総指揮:役所広司
  • 撮影:フランツ・ラスティグ
  • 編集:トニ・フロシュハマー

ドイツの名匠、ヴィム・ヴェンダース監督は『パリ、テキサス』や『ベルリン・天使の詩』など、多くの名作を手掛けてきました。本作では、東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日常を描き、役所広司とのコラボレーションが話題となりました。

ヴェンダース監督は、日本映画の巨匠・小津安二郎監督に大きな影響を受けており、その影響が本作にも色濃く表れています。彼の作品は、静謐な美しさと深い人間ドラマが特徴で、多くの映画ファンから高い評価を受けています。

 

公開情報

  • 公開日:2023年12月22日
  • 配信:Amazonプライム・ビデオ、U-NEXTにて配信中(2025.1.8現在)
PERFECT DAYS
東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、静かに淡々とした日々を生きていた。同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、男は毎日を新しい日と...
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映画『PERFECT DAYS』の見どころと魅力

静けさの中に込められた深いメッセージ

映画『PERFECT DAYS』は、劇的な展開や派手なアクションに頼らず、静かな力強さでメッセージを届けています。それは、日常に潜む小さな幸せや意味を見逃さず、大切にすることの重要性を訴えかけます。

平山の生活は、日々の小さな楽しみに満ちています。毎朝同じコーヒーを飲み、昼食はいつもの公園で取り、揺れる木々を写真に収める。休みの日には銭湯や古本屋、行きつけの居酒屋にも足を運びます。こうした何気ない日常が平山にとって大切であり、映画は幸せが意外と身近なものに隠れていることを教えてくれます。

また、映画を観ていると「足るを知る」という言葉が心に浮かびました。これは「現状に満足すること」を意味しており、理想を追い求めることも大切ですが、今あるものに満足できることの大切さを改めて感じました。足りないものに目を向けるよりも、今の自分が持っているものを大切にすることが、より豊かな生活を作る考え方だと思います。この考え方を心に持つことが、人生を充実させるカギだと映画を通じて実感しました。

 

役所広司の静かな演技力

役所広司さんは、平山というキャラクターを見事に演じています。平山は無口で控えめな性格の人物であり、その特徴がセリフの少なさに表れています。しかし、その言葉の少なさが逆に、彼の表情や仕草、そして微細な感情の変化に目を向けさせます。役所さんは無駄なセリフを避けつつも、視線の動きやほんのわずかな顔の表情、姿勢の変化などを通して平山の内面を丁寧に表現しています。

彼の演技には物足りなさがまったく感じられません。むしろ、言葉にしないことで感情が一層強く伝わってきます。特に、平山が一見無表情であるように見えても、実は心の中で大きな変化を抱えていることが観客にしっかりと伝わるのです。平山の内面的な葛藤や、他者との繋がりを求める静かな欲求が、役所さんの演技によって細やかに描かれています。

特に印象に残ったのは、平山の姪であるニコが登場するシーンです。平山の表情が明らかに柔らかく、ほころんでいるのが伝わってきました。言葉にしなくても、ニコへの深い愛情がひしひしと感じられ、観ているこちらまで微笑ましい気持ちになりました。

 

トイレのデザイン性と映画のテーマ

映画の中で重要な役割を果たしているのが、渋谷にある公共トイレのデザインです。このトイレはただの清掃場所ではなく、映画のテーマである「日常の美しさ」を象徴する場所として描かれています。トイレのデザインは非常にシンプルでありながらも洗練されており、その空間が平山の心情や映画全体の静かな雰囲気を引き立てています。このデザイン性は、映画を通して「美しさが存在する場所はどこにでもある」というメッセージを観客に伝えており、映画の哲学的な要素を深めています。

映画を観て初めて知りましたが、渋谷区にはこんなにもスタイリッシュで洗練された公共トイレがあるんですね。実際に訪れてみたくなり、利用する際には大切に使いたいと思いました。渋谷区のトイレについて詳しい情報は紹介サイトで確認できるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

THE TOKYO TOILET
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ヴィム・ヴェンダース監督による日本の美しい風景

ヴィム・ヴェンダース監督が描く日本の風景が映画の魅力の一つです。日本の風景を独自の視点で切り取り、美しい映像詩のように描いています。特に東京の喧騒の中に潜む静けさや調和が丁寧に捉えられ、渋谷区の公共トイレや公園、街並みが象徴的に映し出されています。これらの日常的な風景は、都会生活の中に存在する癒しや安らぎを示し、映画全体のテーマである「日常の美しさ」と調和しています。トイレのデザインや清掃のシーンは、日本特有の美意識やおもてなしの心を反映し、主人公・平山の静かな人生観ともリンクしています。ヴェンダース監督の視点を通して、日本の「静けさ」や「簡素の美」が詩的に描かれ、観る者に日常の中にある美しさを発見する喜びを与えています。

ヴェンダース監督のインタビューからは、セットや小道具に対する徹底したこだわりが感じられます。特に、平山の持ち物に注目すると、彼の性格や日々の暮らしが垣間見え、観るたびに新しい発見があるかもしれません。

ヴィム・ヴェンダース監督インタビュー「自分に必要なものさえ持っていればいい」 | Numero TOKYO
この名前は映画を愛する者にとって特別なものだ。そう、ヴィム・ヴェンダース監督。1970年代にドイツの新鋭として

 

さいごに

映画『PERFECT DAYS』は、平山(役所広司)のシンプルな日常を通じて、小さな幸せと人との繋がりを静かに描いた作品です。渋谷区の美しい公共トイレが映画のテーマと調和し、穏やかな雰囲気の中で深いメッセージを伝えます。心地よい余韻を残す本作は、Amazonプライム・ビデオで配信中です。まだ観ていない方は、ぜひチェックしてみてください。