『宙わたる教室』あらすじ・ネタバレ・ドラマの見どころを紹介【第一話より】

シネマノート

最近、心から感動できるドラマに出会いました。それが『宙わたる教室』という作品です。見るたびに胸がいっぱいになり、観終わった後はいつも深い余韻に浸っています。それくらい、心にスッと入ってきて、温かく満たしてくれるような素敵なドラマです。

このドラマの舞台は、さまざまな過去や事情を抱えた人々が集まる「定時制高校」です。生徒たちは辛い環境や孤独と闘いながらも、少しずつ前に進んでいく姿が描かれています。その姿に思わず応援したくなります。

特に、過去に傷を負い、孤独を感じた経験がある方には、このドラマのメッセージが深く刺さるのではないかと思います。人間らしい弱さと強さ、そして再生の物語が優しく丁寧に紡がれています。

『宙わたる教室』は、派手な演出や大きな話題性こそないかもしれませんが、だからこそこのドラマの存在を多くの方に知っていただきたいと思いました。この記事を通じて、少しでもこの作品の魅力が伝われば嬉しいです。

このドラマは特にこんな方におすすめです!

  • 過去に何かを諦めたことがある方
  • 心に傷を抱えた経験がある方
  • じっくりと考えさせられるドラマが好きな方

 

『宙わたる教室』とはどんなドラマ?

『宙わたる教室』は、202410月よりNHK総合で放送されたテレビドラマです。原作は伊与原新の同名小説で、20231020日に文藝春秋から刊行されました。物語の舞台は東京・新宿にある定時制高校で、さまざまな事情を抱えた生徒たちが通っています。元エリート科学者で理科教師の藤竹叶(窪田正孝)が、生徒たちとともに科学部で「教室で火星を作る」というテーマに挑戦し、成長していく姿が描かれています。生徒たちは、科学を通じて自分の殻を破り、成長する姿が感動的に描かれています。

以前から感じていたことなのですが、NHKのドラマは個人的に面白い作品が揃っていると思っています。例えば、『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』や『透明なゆりかご』、『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』など、私のお気に入りの作品も多くあります。これらの作品はどれも印象に残る内容で、そんな中で『宙わたる教室』も新たに加わった素敵なドラマの一つです。

 

※以下ネタバレを含みますので、まだ観ていない方はご注意ください

印象に残ったシーンやその感想

#1「夜八時の青空教室」より

小さい頃からなぜか読み書きが苦手だった柳田岳人(小林虎之介)。学校のテストでも、文章問題に手をつけることができませんでした。そのことで、周囲からは馬鹿にされ、両親からは「努力が足りない」と叱られ、心に深い傷を負ってしまいます。岳人は、自分ができないのは単に努力不足だと思い込み、そのことがさらに自分を追い詰めていました。

そんなある日、岳人が通う夜間定時制高校に新しい理科教師、藤竹(窪田正孝)が赴任します。藤竹は、岳人が読み書きに苦しんでいる原因を「ディスレクシア(読字障害)」ではないかと考え、そのことを岳人に伝えます。これまでずっと「努力が足りないからできない」と自分を責めてきた岳人は、実はそれが原因ではなかったと知り、困惑します。現実を受け止めることができず、しばらくは混乱した気持ちを抱え続けます。

しかし藤竹は、岳人の中に眠っている好奇心に気づきます。特に、英語の授業で「なぜ空は青いのか」という素朴な疑問を持っていたことを知り、そこから彼をある授業へと誘います。「今からここに、ささやかな青空を作ります」と言いながら、藤竹はレイリー散乱という現象を使った実験を行います。

レイリー散乱とは、太陽の光が空気中の小さな粒子にぶつかって、光がいろいろな方向に散らばる現象です。このとき、青い光は赤い光よりも散らばりやすい性質があります。そのため、空は青く見えるのです。このように、レイリー散乱は空の色を決める大切な役割を果たしています。

 

実験の締めくくりに、藤竹が語った言葉が心に残りました。

「たとえ私たちが太陽から背を向けていても、目に飛び込んでくる。それが空が青い理由です」

岳人はこの授業を通じて、自分が持っていた疑問を解決できた喜びや、学びに対する新たな気づきを得ることができました。最後に空を見上げた時の清々しい表情がとても印象的でした。

 

このエピソードを通じて、最初に感じたのは「理解と受け入れの大切さ」でした。岳人が自分の苦手を「努力不足」と捉えてきたこと、またそれを自分にとっての「限界」として受け入れてしまっていました。藤竹が岳人にディスレクシアの可能性を指摘し、彼がそれを少しずつ受け入れるまでの心の葛藤が印象的でした。

「努力すればできる」という思い込みが時に人を苦しめることがあるということを改めて考えさせられました。岳人にとっては、「できないこと」に対して自分を責め続けることが長い間続いていましたが、藤竹がその原因を見つけ、彼に新しい視点を与えた瞬間が心に残ります。

また、藤竹が岳人に向けた「ささやかな青空を作る」という実験もとても象徴的で、空が青い理由を学ぶことで、学びの喜びと共に「分かること」の素晴らしさを改めて感じさせてくれました。藤竹がただ教え込むのではなく、岳人の好奇心を引き出して、彼自身が感じる喜びを大切にしているところがとても良かったです。

 

さいごに

ドラマ『宙わたる教室』は、生徒たちの孤独や悩みに寄り添い、科学を通じてそれを解きほぐし、新たな希望を見出させる心温まる物語です。

第一話の主人公、岳人はこの作品で誰よりも大きな成長を遂げ、変化を見せるキャラクターです。その真剣で一生懸命な姿が彼の魅力であり、科学への純粋な好奇心を感じさせる表情は、彼の本来の姿を物語っています。観るたびに、ますます彼を好きになっていきます。

また、藤竹が「ここは諦めたものを取り戻す場所」と語った言葉が特に印象に残りました。この学校には、年齢も背景も異なる生徒たちが集まり、それぞれの悩みを抱えながらも、この場所で少しずつ希望を見出そうとしています。たとえ一度は諦めたとしても、再び立ち上がり、前へ進むことの大切さを教えてくれる作品だと感じました。

このドラマはすでに放送が終了していますが、「NHKオンデマンド」や「Amazon Prime Video」の一部サービスで視聴することができます。興味を持った方は、ぜひチェックしてみてください!